CHINA
月神の贈り物
ステージ 3
ストーリー Wilson Ye
翻訳・編集: CLAチーム
イラストレーション:ファレン・フェビオラ
プロローグ
今、シュンの父である明国の皇帝は宮殿の門の上に立ち、広場にいる人々に演説をしようとしていました。なんという光景でしょう。彼はただ、崇められることが楽しくて仕方ありませんでした。
「皇帝万歳! 明万歳!」群集の一人が叫ぶと、すぐに全ての人が繰り返しました。近くの兵士たちは長い槍で地面を揺らし、太鼓が激しく叩かれ、旗は風に吹かれていました。全員が皇帝の言葉を待っていました。彼の隣に立っているだけで熱気が感じられたでしょう。
「忠実な国民よ」と、ゆっくりと手を上げながら皇帝が言いました。「今この瞬間、我々がここに集い、力を合わせることを嬉しく思う。今、我が国は疫病に苦しみ、多くの国民を失っている。病院では薬草が足りず、これ以上、病人を治すことができない。そこで、明の皇帝である私は、病を治す薬草を探すため、海外に軍隊を送ることにした。」
「皇帝万歳! 明万歳!」人々は何度も叫びました。その音は、まるで世界のどこまでも響き渡っているようでした。
第一章
その夜、シュンが部屋にいると、足音が聞こえました。するとドアがバタンと開いて、知らない男が入ってきました。
「失礼します。この部屋には他に出口はないのでしょうか?」
突然のことにおびえたものの、礼儀正しい言葉に、シュンは「まず名前を言って、何が起きているのかを説明するべきではないですか?」と言いました。
「私の名前はカンです。皇帝の工場で働いています。」彼はなめらかな金色の石をシュンに渡しました。「この石は、工場で金を作るのに使っているものです。私たちは毎日、一生懸命働いています。しかし、今はハオ皇帝に追われています。さあ、出口を教えてください…」
「私は、皇帝に逆らう者を助ける気はありません。あなたたちは捕まるべきです!」
「待ってください! そういう意味ではありません! ―――ハオ皇帝!?」その時、皇帝が信頼する大臣であるタンと一緒に部屋に入ってきました。
「姫、この男に何かされたのか?」
「いいえ、父上。私は大丈夫ですが、この男を部屋から追い出してください。」
「お願いです、ハオ皇帝」とカンが言いました。「助けてください。あなたのためなら命さえ差しあげます。しかし私たちにはこの病気を治す方法がないのです!」
「向こうに行って話そう」と皇帝は促しました。「お前も仲間たちも心配はいらない。約束しよう。」彼はそう言うと大臣の方を向きました。「タン、シュンを頼む。大広間で会おう。工場の者たちを集めている。」皇帝はカンを連れて部屋を出て行きました。シュンは美しい石をポケットに入れました。
タンは謎の多い国、元から来た人です。彼は明にやってきて、シュンの召使と家庭教師から始まり、宮廷のリーダーに昇進し、最終的に大臣になった人です。
「大丈夫ですか?」タンは聞きました。
シュンは素早く返事しました。「あの男はドアを押し開け、宮廷から逃げる方法を探していたのです。それから父上とあなたが来たのです。」
「近くにいてよかったです。」
「あの男たちはどうなるのですか?」
「北に新しくできた病院に連れて行き、特別な薬で治します。あなたも今日聞かれたでしょうが、私は薬を手に入れるため、元に旅をする予定です。では、そろそろ私は皇帝のお手伝いに行かねばなりません。もう安全です。」
タンが去り、金の石の美しさに驚いた後、シュンは広間へ向かいました。待っている間、二人が資源不足を議論しているのが聞こえました。皇帝はタンを信頼していました。タンは皇帝を恐れることなく、彼に意見を述べ、影響を与えていました。シュンは二人の関係に感心しました。「今夜も満月です。病院で彼らが暴れないか心配です」とタンは言いました。
「お前の計画が失敗していなければ、こんなことにはならなかったのに!」ハオ皇帝は言いました。
「計画通りに進んでいます。もっと力をつければ、いくらでも金を手に入れることができるでしょう。元は資源が豊富ですが、開発は進んでいません。あなたの指導のもと、明は大陸で最も大きな力を持つようになるでしょう!」
シュンにとって、元は謎の多いところでした。彼女は広間に入り、こう言いました。
「父上、私も一緒に行くことをお許し下さい。」
「それはだめだ。」
「どうしてですか? 彼らはどこへ行くのですか?」
「元だ。すまないが、お前の居場所は宮廷の中だ。」
「父上はいつも私に何もさせてくれない!」シュンは怒りました。
「私に向かって声を荒らげるのか。私はお前の父親で、お前は王女だ。タンが教えた礼儀はどうした!」
「タン、この作戦はあなたの提案でしょう。私を行かせるように父に頼んで! 少なくともあなたは私を分かってくれますよね。あなたは私を守り、色々なことを教えてくれた。本来は父上がすべきようなことを。」シュンは言い返しました。「父上よりも、タンの方が国のために働いているようですね!」
「いい加減にしろ!」ハオ皇帝はシュンを叩きました。
「シュン様、自分の意見を述べるのはよいですが、外の世界は危険です。お父様はあなたを守ろうとしているのです」とタンは言いました。
「私は大人です! 自分の身は自分で守れます。私はまだ明から出たことがないのです。」
「この話は後にしましょう。」タンはそう言うと、シュンをドアに向かわせ、皇帝の方を向きました。「シュン様はまだ若いです。彼女の年頃では、反抗的になるのはよくあることです。すぐに落ち着くでしょう。」
シュンは走り出しました。二人の会話が頭から離れません。病院では、患者をどのように治しているのでしょう? タンの計画は何なのでしょう
第二章
馬で二時間ほど北に行くと、乾いた湖の底に、シュンの父の病院がありました。病院の正門は、草と、古い、曲がって倒れた木で隠れていました。彼女は、この病院が本当に病人を治すためのものなのか疑い始めました。
「満月だ! みんな気をつけろ!」
「注意しろ、この男、変身したぞ! 助けて! 逃げたぞ! 入り口付近にみんな来てくれ!」
病院の中から人の声が聞こえてきたかと思うと、その瞬間、木の向こう側から速い足音が聞こえてきました。それはどうやら自分の方に向かってきているようでした。
突然、彼女の目の前の木が割れ、ライオンの頭をした巨大な生き物が目の前に立っていました。シュンは驚いて地面に倒れました。
「お願い、やめて…」彼女はあわてて助けを請いましたが、その野獣は何も言わず、ただただ立っていました。彼女とその生き物との間の空気が凍ってしまったようでした。
落ち着きを取り戻すと、シュンは月の光で彼の姿を見ることができました。彼は野生のライオンのようでした。腕にはトゲがたくさんあり、足には爪があります。しかし間違いなく、その荒々しい目は、彼女が部屋で見た男のものとそっくりでした。
「捕まえろ!」誰かがカンの方へ走ってきました。人型のライオンは跳ね上がって、シュンの後ろに走りました。
「カンなの?」シュンは叫びました。あの夜、部屋に男が入ってきた時のことを思い出しました。間違いありません。自分の考えを確かめようとしました。
彼は立ち止まって後ろを向き、シュンを見ました。シュンは、あの時助けてあげられなかったという罪の意識を激しく感じました。
ビュン! 彼女の横を矢が飛び、カンに当たりました。彼は地面に倒れ、痛がりました。大勢の人が追いかけてきて、彼を捕まえました。
「やめて!」シュンは彼を助けようとしました。しかしその時、頭に鋭い痛みが走りました。そして、彼女は気絶してしまいました。
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「シュン様、何を考えていたのですか?」
がベッドで目を覚ますと、横にいるタンの声が聞こえてきました。
「これを飲んでください」と言うと、タンは薬草湯の瓶を渡しました。「力が戻るでしょう。」
「色々…あったんだよ、タン」シュンはお茶を飲みましたが、気分が優れませんでした。
「何があったかは知っています。病院はあの生き物によって壊されかけました。あなたがそこで何をしていたのか、ハオ皇帝が知りたがっています。説明できますか?」彼女は石のことを除いて、全てをタンに話しました。
「シュン様、残念ですが、あなたは病気に感染しているかもしれません。」タンは彼女の上着のポケットから見つけた石を見せました。シュンはゾッとしました。彼の言葉は、彼女が最も恐れていたことでした。
「申し訳ありませんが、あなたはもうここにはいられません。王家が感染すれば、私たちはすべてを失うことになります。治す方法を探すため、私と一緒に旅に出ましょう。」シュンは弱気になっていましたが、急に楽しくなってきました。
「薬草湯を飲んで、出発の準備をしましょう。皇帝には、あなたがいないことを伝えておきますが、病気のことには触れません。」タンはシュンの頭を撫でました。「どうぞお休みください。」タンが去ると、シュンは窓の外の月を見て眠りにつきました。
第三章
旅の始めの数日間、シュンと兵士たちは草原や湿地を越えて進みました。しかし、元に行くには、雪に覆われた山を越えなければなりません。冷気と星空の下、山のふもとで、彼らはキャンプをしました。火のそばで、タンはシュンが一人座っているのを見つけました。
「どうぞ。」タンはそう言うと、できたばかりの薬草湯を渡しました。「満月が近づいていますね。」
「ありがとう、タン。気分がよくなったわ。」シュンはお茶を全て飲みました。「こんなに遅くまで起きていてはいけないとわかっているのですが…」
タンは、彼女の隣に座りました。「ちょっとだけなら問題はありませんよ。」
「ありがとう。父上はこんなこと絶対に許してくれないわ。」
「お父様は偉大な方です。だから、あなたと一緒にいる時間が少なかったのです。彼の支配下で明は栄えています。あなたもその一員です。」
「でも、明の外に出るのは初めてで、こんなに新しい環境は初めてなの。この美しい景色を見ていると、もしかしたら元の人は私たちが思うほど乱暴ではないのかもしれないと思ってしまうわ。」「彼らはあなたが考えているような人ではありません!」タンは激怒しました。「私にはわかります、彼らは野蛮なのです!」
「でも、その民族全体が悪いと思うのは不公平じゃない?」シュンは尋ねました。「あなたのような良い人もいると信じているわ。」
「シュン様…」タンは立ち上がると、話し方が穏やかになりました。「あなたは本当のことを知って失望するでしょう。さあ、もう寝てください。明日は大変に日になります。」
「わかりました、タン。」シュンは元の人々のことを考えながら、テントに戻りました。
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翌朝、彼らは山を登り始めました。頂上に上がるにつれ、空気は薄くなり、雪が積もっていきました。風が音を立てて吹いていました。まもなく吹雪になりました。「馬はこれ以上進めない。みんな、ここから歩くのだ!」タンは叫びました。兵士たちは馬を動かし始めましたが、風はますます強くなります。
「馬の荷物を軽くしないと!」シュンは言いました。
「いや、待ってください!」タンはシュンを止めようとしましたが、間に合いませんでした。シュンが荷物を開けると、たくさんの武器が出てきました。
「これは何?」とシュンは尋ねました。
「身を守るためのものです。」
「他人の土地に行って助けを求めると同時に、その人たちを脅すというのはどういうことですか?」シュンは怒りました。
「この話は後にしましょう。移動を続けるぞ」とタンは指示しました。
「何が起きているのか教えてくれるまで動かないわ。」
「シュン様、甘く考えないでください。これは我々の使命なのです。」
「どれだけ武器を持っているの?」とシュンは怒りました。「これは調査なの? 遠征なの?」
「あなたが考えているようなことではありません…」
「私はバカじゃないの! 本当のことを教えて。治療法を探すんじゃなかったの?」
「そうです、明の未来のための遠征です」とタンは認めました。
「どうして? 私はどうなるの? 感染した人たちは?」シュンは膝をつきました。
「さあ、立ってください。」
「私は戻るわ。」
「立てと言っているでしょう!」タンが叫びました。すると、シュンは突然、赤くなり始めました。
「何を…したの?」体が自分の意志に反してタンの命令に従っていることに気づき、シュンは尋ねました。
「あなたは何も知らないのです、シュン様。さあ、進みなさい!」
シュンの体は再びタンに従いました。タンが自分の体を操っていることに気づき、恐怖を感じました。
改めて、シュンは自分の体が何かの力に操られ、歩かされていると感じました。終わりのない雪が彼女の視界で血のような赤に変わり、不快な寒気が背骨から広がり彼女の感覚をふさいでいきました。
「私を…操らないで!」シュンは力から逃げようと、まっすぐに歩き出しました。すると突然、足が力強くなり、胸が炎で燃えているように感じました。凍えるような風とともにシュンは走り出し、広大な白い雪の中に消えていきました。
「おい、戻ってきなさい!」タンはシュンを操れなくなったことに気づきましたが、手遅れでした。彼は怒りで足を踏み鳴らしました。「立ち止まるな!」タンは向き直り、兵士たちに移動するよう命じました。雪の中、兵士たちは進んでいきました。歩いていると、雪と風の音に混じって、大きなうなり声が聞こえてきました。まるで食べ物を探している動物のように、その声には深い、怒りに満ちた響きがありました。次の瞬間、巨大な影が脅かすように、鳴きながら兵士たちに迫ってきました。
「雪の怪物だ!」兵士たちは叫びました。
「そんなバカな…」いつもは冷静なタンも、慌てていました。「攻撃をするな!」
タンは兵士に身を伏せるよう命じましたが、怪物は彼らに近づいてきました。前の兵士がたまらず長い槍を突きましたが、逆に怪物に押しつぶされ雪が赤くなりました。雪に覆われ、ライオンの頭をした生き物は、大きく叫びながら背を向けました。愕然とした兵士たちを後に、鳴き声が山に響き渡りました。
タンは雪の上に立ち、拳を突き上げて言いました。「このまま行かせたりはしないぞ。必ずお前を見つけてみせる。何をしてでも。」
不運なことに、吹雪は激しく山道をふさいでいました。タンとその兵士たちは山を下り、春まで待たないといけませんでした。
第四章
シュンは、ヤカンから来る、良い香りの蒸気で目を覚ましました。「起きたかい」と、奇妙な格好をした老人が言いました。
「ここはどこ?」シュンは弱弱しい声で尋ねました。
「元の国だ。ここは我々の村だ。私の弟子たちが、寒さで死にそうな君を見つけたんだ。山道からこの美しい谷間まで、彼らが君を連れてきたんだ。」
「なんですって?」シュンは少し混乱しました。
「あなたは明の国から来られた、タンという男とその兵士たちと共に。」
シュンは説明しました。「私は明の王女で、ハオ皇帝に送られて来ました」と誇らしげに言いました。「明では疫病が起きています。あなたたちがその疫病を治す薬草を持っていると聞きました。」
するとその老人、ゼ師は、タンという男が元を去る前に何者だったのか、何時間もかけてシュンに説明しました。彼が錬金術師であること。非常に欲が深く、人々の心を操ること。金を作るために元の人々から月の石を盗んだこと。赤いお茶を淹れて人々の心を操ったこと。
「そういうことだったのね…」シュンは山でタンがどうやって自分を操っていたかを思い出しました。
「彼は元から追い出された。タンが月神の石を悪用すれば、元の国民に疫病が広がるからだ。」
「月神?」
「月神は古い言葉で『ユエ』という。月の女神だ。」
「待って、月神が病を起こすの?」
「違う。月神は病気を治すものだ。心と魂を支配することができれば、病気を治せる。カンフーを学び、月神の英知に従うことで、病気を治すんだ。やってみるか?」
「はい、やります、お願いです!」シュンは迷うことなく同意しました。
❊
ゼの指導のもと、シュンは武術の基本をすぐに習得しました。そして、ゼの前で自分の力を見せることにワクワクしていました。
練習場にはさまざまな種類の長短の板があり、シュンはそれらを簡単に壊しましたが、真ん中の一枚だけが残りました。シュンはその板をどうしても壊せませんでした。なぜなら、板の周りには水の溜まった溝があるからです。板を割るためには、そこを飛び蹴りで超えなければなりませんでした。方法は単純ですが、その溝を越えるには、かなりの力が必要です。シュンがひたすら力を集中しようとしても、何度も的を外してしまいました。
この失敗でシュンは落ち着きを失い、弟子たちは大声で笑いました。
「カンフーはすぐできるものではない。今のお前の強さは病気のおかげで、自分自身の力はとても弱い。だから体が力を発散するばかりで、一点に集中させることができないんだ」と、ゼは言いました。
「娘さん、諦めたほうがいいんじゃない!」弟子たちは一人一人、中央の板を割っていきながら、シュンをからかいました。
「耳を貸さなくてよい。その板を壊せるようになるまでは自分で力をつけなさい。そうしたら、もっと難しいことを教えてやる。」ゼは地面に倒れるシュンを残して、去っていきました。
シュンは何日もかけてトレーニングを重ね、心を整えました。
ついにある日、ゼの前で、彼女は水の上を飛び、板を割ってみせたのです。
「素晴らしい」ゼは褒めました。「ついてきなさい。」ゼはシュンを連れて丘を登り、輝く石で覆われた草むらのような場所に行きました。「ここは月神に祈りをささげる秘密の場所だ。この石は月神が残したものだ。昔はもっとたくさんあったのだが、タンが石をたくさん持っていってしまった。」警告にもかかわらず、シュンはその石に惹きつけられました。シュンはカンからもらった石を思い出しました。いけないことだと思いながらも、シュンは石を欲しいと思いました。
第五章
満月が近づいてきた夕方、ゼは腰を下ろすと釣竿を手にしました。
「最近、武術ばかりやっているな。今夜の課題は釣りだ。」
「え?」
「おしゃべりは無しだ」と、ゼは目を閉じたまま言いました。戸惑いましたが、シュンも座りました。穏やかな湖とでこぼこの山の前で、静かで平和な時が流れました。「知恵と修行は魂を落ち着かせる」と、ゼはゆっくりと言いました。
「知恵と修行…」シュンは繰り返しました。
「見ろ、満月が昇ってきた。君の中にいるそれがもっと活発になる。満月の時に起こる変身の話、覚えているかな?」
「ええ、覚えています。」
「月神の弟子たちは、彼女から大いなる力を受け取ることができる。」ちょうどその時、ゼの釣竿が揺れ、大きな魚が飛び跳ねました! ゼはその魚を腕の中に捕まえました。「力を感じるか?」シュンは自分の手を見ました。病院で見た、カンの変異した爪を思い出しました。シュンは、怖いと感じながらも、力を感じて興奮しました。
「こうして私は雪の中で正気を失ったのですね!」
「正気を失ったのではない。力をもらったのだ。」ゼは慎重に魚の口から釣り針を外しました。
「変身は、すべての満月の夜に起きるかもしれない。強い力に自分を失う者もいるが、正義の心を持つ者には影響はない。お前はその力を良きもののために使わなければならない。できるかな?」日が暮れてきたので、ゼは魚を湖に戻しました。
「なぜ、魚を戻すのですか?」
「タンは、自身の欲に捕まってしまった魚のようなものだ。お前には、その欲に捕らわれないでほしい。」
❊
突然、下の村から叫び声が聞こえました。火の明かりの中で槍が揺れているのが見えました。シュンは心臓の鼓動を強く感じました。ついにタンの軍隊が村に到着したのです。軍隊が村人たちを殺していました! シュンは急いで戦場に行きました。そして修行のおかげで、明の軍隊を押しのけ、村人たちを助けることができました。
「タン、出てきなさい!」と、シュンは叫びました。「私を探しているのはわかっています! 出てきなさい、話をしましょう!」
「まあ、まあ! シャーッ! これはかわいらしい姫様ではないですか?」霧の中から耳をつんざくような音が響き、巨大な影が現れました。頭が蛇、足が人の怪物でした。
「タン、どうして…」
「病気のせいだ、わからないのか? ずっと昔にかかったんだよ! この病気のおかげで、俺は強い! 誰にも邪魔はさせない!」タンはシュンに突きかかりました。するとその時、ゼ師が二人の間に飛び込み、その攻撃を受け止めました。タンは笑って、尻尾を伸ばしてゼを自分の横に引き寄せました。タンは口を開け、ゼを飲み込もうとしました。
「先生!」シュンは跳び上がると、電流が自分の神経を走り抜けるのを感じました。体は軽く、より力強くなりました。手足には爪が生え、顔にはたてがみが生え、叫び声は深い吠え声に変わりました。シュンはタンの尻尾を払いのけ、腕の中にゼを救い出しました。
「先生、大丈夫ですか?」
「彼のワナにはまるな」と、ゼは弱々しく言いました。「自分の運命のために戦わなければならない。心を落ち着かせるのだ…」
「先生、先生!」ゼはシュンの腕の中で気を失いました。「ごめんなさい!」シュンはゼを抱きしめて涙を流しました。
「お前が病気だとわかって、最初は嬉しく思ったよ。だからここに一緒に連れてきたんだ。それほどの力があれば、私と力を合わせれば一緒に世界を支配できたのに、残念だ!」と言うと、タンは地面から立ち上がりました。
「黙りなさい、タン! あなたは私の先生を殺した! これがあなたの望んだことなの?」
「いや、まだ足りない! 秘密の石をもっとたくさん奪い、もっと多くの男たちに病気をうつして私の軍隊に加える。そうすれば、金のことしか考えていない単純なお前の父親は、しまいに私の足元にひれふすだろう!」
「そんなことはさせない!」髪は逆立ち、野生の心臓を燃やしながら、シュンは唸って突進し、タンを地面にたたきつけました。
「これが私と父に嘘をついたお返しだ! これが元と明の人々を傷つけたお返しだ!」シュンは爪の生えた拳をタンに降りおろすと、一撃ごとにさらに力を込めました。
「続けろ、続けろ、続けろ! 俺を殺せ!」タンは叫びました。彼は何の抵抗もせず、降り注ぐシュンの拳に身を任せ、彼女が正気を失うことを願っていました。
シュンの目は真っ赤になっていました。彼女の顔と手はタンの血で汚れていました。獲物に襲いかかる残酷な獣のようでした。
その時、聞き覚えのある音楽が流れ始めました。村人たちが家から出てきて、弦楽器を奏でながら、空に向かって「月神よ、どうか怒りを抑えてください」と叫びました。感動的な旋律に、シュンは戦うのをやめると、人間の姿に戻りました。
「奴らの言うことを聞くな! 私を殺せ! こいつらはバカだ! こいつらは野蛮人だ!」と、タンは叫びました。
「元の野蛮な人はあなただけよ。私はここに来て初めて、明の外の世界の豊かさを理解したの。ここの人々は、私の心を落ち着かせ、感情をなだめる方法を教えてくれた。あなたの思うようにはさせない、タン。この力はあなたのためではなく、良きもののために使うつもりよ。小さいころ、私の面倒をいつも見てくれてありがとう。今、あなたが立ち去るなら逃がしてあげるわ。でも、もしまた問題を起こしたら…」
「くそっ! また来るからな! シャーッ…」と、タンは怒りながら、兵士たちに引きずられて去っていきました。
❊
人々は喜びの声を上げ、シュンを抱きしめましたが、彼女は立ち止まりませんでした。彼女はゼが倒れた場所に走りました。
「先生、教えに従いました。私はタンの支配から抜けました! 私たちは助かったんです!」シュンはポケットからさらに二つの石を取り出しました。「これが私の取った最後の石です。病気を治す方法は別にあるはずです。がっかりさせてごめんなさい! お願い、目を覚まして!」とシュンは泣きながら言いました。
シュンが泣いていると、ゼは震える手で石をゆっくりと拾い上げました。
「先生、生きていたんですね!」
「石のことは前から知っていた。正直に話してくれてありがとう。少し、静かな時間をくれ」とゼは目を閉じたまま言いました。
「はい、先生!」シュンはゼの隣に横になって、星空を見上げました。
しばらくの沈黙の後、ゼが口を開きました。「そろそろ、あなたは国に帰ったほうがよいだろう。」
「そうですね、明日には帰ります。まだ戦いが残っていますから。あれを見てください、また月が出ています! とても明るいわ!」
「そうだな」
THE END