INDONESIA
バスワラの物語
ステージ 3
ストーリー:ロティ・ショーヴェク
翻訳・編集: 近藤結・CLAチーム
イラストレーション:アニャ・マハラニ・クマラワテ
プロローグ
はるかな場所、バスワラは僕のふるさとだ。悲しいことに、いつもふるさとだと思っていたわけではなかった。チャハラは、誰もが知るバスワラのリーダーだ。彼はたくさんのおかしなルールを作った。例えば、男性は短い髪にする、女性は長い髪にする、というルールがある。みんな彼のルールを守っていたけど、僕は守りたくなかった。でも僕はチャハラの力が怖かった。「メラティ」を見つけて、僕はラッキーだった。「メラティ」には、僕と同じ人がたくさんいるからだ。
Chapter 1
この物語はバスワラの朝から始まる。ある日、ヌサとカンタンは広場を歩いていました。
「一緒に来てくれてありがとう! 信じられる? ついに僕が書いた本が初めて出るんだ!」ヌサは興奮して言いました。
「もちろんだよ。見て! 君の本だ!」カンタンは本屋の前に置かれていた本を指さしました。
ヌサは店に入り、その本を取りました。ヌサは1ページずつ読みました。しかし、ヌサの話は完全に違ったものに変わっていました。政府が本に書いたことを変えてしまったからです。ヌサはがっかりして、本を閉じました。
「何かあったの?」カンタンは言いました。
ヌサは何も答えませんでした。カンタンは本を取り、少し読んで、何があったかを知りました。すると、広場から大きな叫び声が聞こえました。
若い男が道徳警察につかまっていました。髪が長かったからです。そこに、バスワラのリーダー、チャハラが来ました。
「お願いです! 許してください! なんでもしますから!」長い髪の男は請いました。
「ルール破りをする者の言い分など聞けない! アンティリアに連れて行け!」チャハラが命令しました。
静かな広場に突然大きな声が響きました。
「やめろ! 彼を放してあげて! 彼は何も悪いことをしていない!」と、ガヤトリが叫びました。
「お前は誰だ? 私に刃向かうと言うのか?」とチャハラは怒って言いました。
ヌサは一部始終を見ていました。彼は素早くチャハラとガヤトリの間に入りました。
「チャハラ様! 彼女を許してください!」ヌサはチャハラに頼みました。
チャハラはそれを見て驚きました。チャハラは顔を背けて言いました。「だまれ! 私が支配者だ! お前もアンティリアに行きたいのか?!」
チャハラが去ると、すぐにガヤトリは歩いてきてヌサを押しました。「なぜ私を止めたの? あなたは誰よ?」明らかに怒った様子でガヤトリは言いました。
「まず、ありがとうって言いなよ。僕はヌサ。よろしく。君の名前は?」ヌサは丁寧に尋ねました。
「止めないでほしかったわ! それに怪しい男に名前は言いたくない!」ガヤトリは言いました。ガヤトリは帰ろうとしましたが、ヌサに止められました。
「なぜ君は長い髪の男を助けようとしたの? ルールは良いものじゃないのかい? 僕たちを守るためのものだから」とヌサは言いました。
ガヤトリはイライラしながらため息をつきました。
「いいかい、ヌサさん」とガヤトリは厳しい声を出しました。「チャハラが作ったルールは、みんなを守るためじゃない。チャハラの力を強くするためのものなの。バスワラは平和に見えるけど、平和じゃない。チャハラは、私たちに外の世界から来たものを見せないようにしているから、みんな、この場所のひどさがわからないだけだ。」ガヤトリはヌサを置いてどこかに行きました。
Chapter 2
ヌサはカンタンと家に帰りました。ヌサはガヤトリの言ったことをまだ考えていたので、カンタンの話を聞いていませんでした。
「ちょっと? 聞いてる?!」ヌサの顔の前で手を振りながらカンタンは言いました。
「カンタン!」と、ハッとした様子でヌサは言いました。「ごめん、もう一回言ってくれる?」
「何を考えていたの?」とカンタンは尋ねました。「さっき広場にいた女の子のこと?」
「あぁ、そうだよ」と、ヌサはうなりました。カンタンは人の心が読めるようです。
「じゃあ、教えてよ!彼女はなんて言ってた?」カンタンは腕を組んで話を聞こうとしました。
「彼女は、バスワラは平和じゃない、って言ってた! チャハラが、私たちに外から来たものを見せないから、みんなはバスワラのひどさをわからないんだって。僕はバスワラがどうして孤立しているのか、いつも不思議に思っていた。彼女が言ったことは正しいと思う。」ヌサは言いました。
「ヌサ! それは危険な考え方だよ! チャハラに刃向かっていると思われるよ!」と声を低くしてカンタンはささやきました。「もし道徳警察がこの会話を聞いていたら、君はアンティリアに送られる!」カンタンは言いました。
「でもね」とヌサはため息をつきました。「僕の友達はみんな、法律を疑うのはいけないことだと思っている。君以外はね。君は、僕の最初の本当の友達だよ。要するに、僕は君を信頼してるってことさ。君は僕にとって本当に大事だし、君の意見も重要なんだ!」
「僕を信じてくれて嬉しいよ、ヌサ」とカンタンは言いました。カンタンは深く息をついて、気持ちの準備をしているようでした。「だけど、君は知っておくべきだ。僕は普通とは違うんだ。」空気が急に重くなったようでしたが、ヌサは黙っていました。「僕は、バスワラがこの国の男に求めているものとは違う。僕の生き方そのものが法に反しているんだ。僕はいつも不安だ。いつアンティリアに送られてしまうのかと考えている。」カンタンは悲しそうにうつむきました。ヌサが彼を通報してしまうかもしれません。
「僕は君を通報したりしないよ」とヌサは言いました。
「小さい頃は、完璧なバスワラ市民でいようと何があってもルールを守っていた。…本を書くようになるまでは」とヌサは続けました。「でも、そのルールはおかしいと気づいた。政府が、僕が本に書いたことを変えてしまったからだ。」
カンタンは微笑むと出かける準備をしました。「ついてきて、ヌサ。答えがわかるところに連れて行ってあげるよ。」とカンタンは言いました。
「え、何? どこへ?」ヌサ言いました。カンタンは何も言わず、歩き始めました。
「カンタン、待ってよ!」ヌサはコートをつかむと、カンタンを追って外へ出ました。
Chapter 3
カンタンはヌサを路地裏に連れて行きました。行き止まりまで歩くと、カンタンが隠しドアを開けると、下に続く階段がありました。階段を降りると、様々な人たちが本当に楽しそうにしている、明るい部屋がありました。髪の長い男性、髪の短い女性が自由に話しています! その部屋には規則破りたちがたくさんいましが、みな幸せそうでした。ヌサはびっくりしました。辺りを見回していると、カンタンが誰かを連れてきました。
「ヌサ、彼女はガヤトリ。ガヤトリ、彼はヌサ。」とカンタンは二人を引き合わせました。
ヌサはガヤトリを見据えました。ガヤトリもヌサをじっと見ました。ヌサはガヤトリに微笑みました。ガヤトリは嫌そうな顔をしました。奇妙な空気でした。
「今日、広場でもう会ったよ」とガヤトリはそっけなく言いました。
「そうだね」カンタンは同じくそっけなく答えました。
「カンタンに話したいことがある、今!」と言って、ガヤトリはカンタンを別の場所に連れて行きました。「なんで彼をここに連れてきたの? 何を考えてるの!?」とガヤトリは怒ったように尋ねました。
「うまくやっていくためには人が必要なんだ。彼はメラティにぴったりだと思うよ」とカンタンは答えました。
「でもなんでヌサなの? 私は彼が嫌いだ。彼はおかしい!」とヌサを見ながらガヤトリは言いました。
「そうかな? 彼がおかしいと思うのかい? ヌサも君と同じだ! 二人とも、アンティリアに送られるかもしれないのにチャハラに反抗したじゃないか。それに、彼は君のことを可愛いと思ってるよ。だから、彼を仲間に入れてあげようよ。」とカンタンは子犬のような目でお願いしました。
ガヤトリも心の底では、カンタンが正しいことはわかっています。しかし彼女にとっては、ヌサは「広場で自分の邪魔をして質問してきたおかしな男」でしかありませんでした。「わかったよ! チャンスは一度きりだ!」とガヤトリはヌサのところに戻りました。無理をして微笑むと、メラティに迎え入れました。
時間が経ちました。ヌサはカンタン、ガヤトリ、そして他の人々と話しました。メラティはチャハラのルールに合わない、普通とは違う人々のために作られました。メラティの子供たちは、路上で拾われてきた子たちか、親のない子たちでした。
その場所は、窓がないにもかかわらず、バスワラの変化を望む人々の希望でいっぱいでした。
Chapter 4
ヌサがメラティをよく訪れるようになってから、数週間が過ぎました。ヌサはメンバーと話すほどに、ワクワクするようになりました。どうやら、ガヤトリはメラティの子どもたちにダンスを教えているようでした。ガヤトリは、中でもキラナという子どもが好きでした。
「ガヤトリ先生、これで合ってる?」キラナは、ガヤトリが先ほど教えた手拍子とポーズをしてみせました。
「そうそう、合ってるよ、キラナ」ガヤトリは言いました。指導をさらに重ねて、練習が終わりました。
「これで終わりだね、ご飯を食べにいこう! お腹すいた!」カンタンは嬉しそうに言いました。
「僕も一緒に行ってもいい?」ヌサは尋ねました。彼も練習を見ていたので、お腹が減っていました。
そういうわけで、ガヤトリ、ヌサ、カンタンは一緒に昼ご飯を食べに行きました。食べ終わったあと、三人は広場を歩いていました。彼らが楽しく過ごしていると、突然、三人の道徳警察官が来て、カンタンをつかまえました。
「何をするんだ! 離せ!」二人の道徳警察官に手錠をかけられながらカンタンは叫びました。
「カンタンを離せ! 彼は何も悪いことをしていない! 私たちは公園を歩いていただけだ!」ガヤトリは警察に言いました。
「黙れ! ここにいる男はバスワラのルールを破った!」警察官は言いました。ヌサ、ガヤトリ、カンタンはびっくりしました。「彼はただちにアンティリアに送られる。さあ、通してくれ。」道徳警察はカンタンを連れて去っていきました。
警察が去って、ガヤトリはカンタンのことを心配しました。カンタンは彼女にとって兄のようなものです。ガヤトリは座りこんで泣きました。
「ガヤトリ、泣かないで! カンタンを何とかして取り返そう!」ヌサはガヤトリを慰めようとしました。
「なんで警察はカンタンが普通と違うと知っているの? このことを知ってた人は…」と言うと、ガヤトリは急に泣き止んで立ち上がり、ヌサを押しました。
「どうしてそんなことをするんだ? 何を考えているんだ?」信じられないといったふうにヌサは言いました。
「何を考えているんだって? そっちこそ!」ガヤトリは叫びました。「このことを知っているのは、カンタン以外には二人しかいない…、君と私だけだ! 私は絶対にそんなことはしない。ということは、君が警察に教えたに違いない!」ガヤトリは叫びました。
「それはわからない」ヌサは言いました。
「…、君が言ったの?」ガヤトリは言いました。
「僕が言うわけないだろ!」ヌサは言いました。
「カンタン以外にこのことを知ってるのは私と君しかいない!ということは、君が言ったに違いない!」ガヤトリは声を大きくしました。
ヌサはびっくりしました。ガヤトリとカンタンがどれほど仲が良いかは知っていました。「ガヤトリ、お願いだ」とヌサは請いました。「僕は決してそんなことはしない! 彼を傷つけたりはしない!」
「私は君を信じてた! どうしてこんなことしたの? もう二度とメラティに来るな!」ガヤトリはそう叫ぶと、背を向け去っていきました。
「君が間違っていることを証明する! 僕がやったんじゃないって証明するよ!」とヌサは大声で言いました。ガヤトリは気にも止めず歩いて行きました。彼女に聞こえたことを彼は願いました。
Chapter 5
あの出来事から一週間が過ぎました。ガヤトリは「連絡をするまでお互い会わないようにすること」とメラティに伝えました。ガヤトリはキラナに、カンタンがアンティリアに送られたことを話しました。キラナは、ガヤトリのことを思い悲しみました。カンタンがガヤトリにとってどれほど大切な存在だったか知っていたからです。ガヤトリは何をすればよいかわからずに困っていたある日、謎が解けたのです。
*
キラナとガヤトリが路地を歩いていると、二人の男が会話をしているのが見えました。一人は長い髪の男です。その男は、アンティリアに送られたはずの、広場にいた男でした。驚いたことに、もう一人の男のことも思い出しました。彼は、広場で長い髪の男をつかまえた警察官でした。ガヤトリとキラナは建物に隠れ、二人の会話を聞きました。
「時間が必要です、警部!」若い男は言いました。
「君は良いスパイではないが、あの男を白状させることはできたじゃないか。どうして今になって難しくなったんだ?」警部は言いました。
ガヤトリは心臓が止まりそうになりました。長い髪の男はメラティのスパイをしていたのです。どうしてカンタンに白状させることができたのでしょうか?
「私が『捕まった後、逃げ出してきた』とカンタンに言ったら、自分のことを教えてくれました。ただ、他のメンバーには会わせてくれませんでした。多分恐れていたんでしょう。」
ガヤトリは、先週の広場での事件はメラティのメンバーを探し出すためのものだったと気づきました。「なんてバカなことをしたんでしょう。私のチャハラへの怒りが危険を招いてしまった!」
ガヤトリはキラナと連れて帰りました。キラナを友人に預けたあと、ガヤトリはヌサの家に行きました。彼に会うことはできませんでしたが、メモを見つけました。
ガヤトリへ
カンタンは君にとっては兄のようなものだよね。誓って言うけど、僕はカンタンの秘密を警察に教えたりしていない。でも君は信じてくれなかった。君が勘違いをしていることを証明してみせる。この手紙を、もし君が見ているとしたら、僕はその頃アンティリアにいるはずだ。カンタンを探し出して、きっと一緒に帰ってくるよ。待っていて。
ヌサ
ガヤトリはびっくりしました。どうやってヌサはアンティリアに行ったのでしょうか? ガヤトリもヌサの所に行かなければなりません。でもどうやって?
ガヤトリは何をすべきかわかっていました。ルールを破る者だけがアンティリアに送られるのです。彼女は家の外に出て、髪を短く切りました。ガヤトリが道を歩いていると道徳警察が来てガヤトリをつかまえました。
「お前の短い髪はルールに反している! 捕まえる」と道徳警察は言いました。ガヤトリはアンティリアに送られました。人々はガヤトリがおかしくなったと考えましたが、ガヤトリの計画はうまくいったのでした。
Chapter 6
ガヤトリは、ボートからアンティリアの海岸に乱暴に投げ出されました。すぐ夜になり、雨が降ってきました。ガヤトリは助けを求めて森に入りました。いくら歩いても、誰も見つかりませんでした。とうとう彼女は倒れて、歩けなくなりました。
「私はたった一人で死ぬのね、誰にも知られずに。」と考えると、涙と雨が彼女の顔を流れ落ちていきました。希望を失い、ゆっくりと意識がなくなっていきました。彼女が目を閉じたそのとき、温かい手がのび、彼女を運んでいきました。
*
ガヤトリは朝日に目を覚ましました。彼女は生きていました! 小さな小屋に彼女は寝ていて、近くにはヌサが座っていました。安堵の気持ちでいっぱいになりました。ガヤトリはベッドから飛び起きてヌサを抱きしめました。
「ヌサ!ごめんなさい! あなたじゃなかった! 警察にカンタンのことを教えたのは、あの愚かな長い髪の男だった!」ガヤトリは腕をゆるめると、ヌサをまっすぐ見つめました。「カンタンを見つけて、ここから出よう!」カンタンを見つけたいという強い思いで、ガヤトリはヌサの手を取りました。
「ガヤトリ、落ち着いて!」と体を引きながらヌサは言いました。「カンタンはそこにいるよ」と彼女の後ろを指しました。カンタンが微笑み、手を振りながら、そこに座っていました。
「カンタン!」ガヤトリは駆け寄り、彼を抱きしめると、永遠とも思われるほど長い間会えなかったことを思い、二人は泣きました。
「心配させたね、ごめんね、ガヤトリ」とカンタンは謝りました。
「長い髪の男に告白したのは失敗だった。彼をメラティに引き入れることができると思ったのさ。僕が間違ってた。」
「ガヤトリはどうやってここまできたの?」と腕をほどくとカンタンが言いました。
「ルールを破ったの! でも問題ない。私たち三人ここにいるから。バスワラに帰る方法を探そう!」ガヤトリは強く言いました。
ヌサとカンタンは顔を見合わせました。「ガヤトリ、僕たちは帰る必要はないよ」とカンタンは言いました。
「どういうこと? アンティリアは犯罪者でいっぱいだよ! なんで帰らないの?」ガヤトリは言いました。
「それは本当じゃない。来て! 見せてあげる!」とヌサは言いました。
ガヤトリが見たのは…、本当に幸せそうな人々が暮らしている村でした! ルールがないからこそ人々は自由に生きることができるのです。三人は一日中アンティリアを見て周り、いろいろな人々と話しました。
何週間か過ぎました。島は、カンタンとガヤトリ、ヌサの家になりました。ヌサはアンティリアを好きになっていました。
「ガヤトリ、僕はここが本当に好きだ」ヌサは言いました。
「私も。天国みたい!」ガヤトリは言いました。
突然、叫び声が聞こえました。
「ここはアンティリアなのか?! 出口を教えてくれ!」と男は何度も叫びました。男は混乱していました。ヌサは前に出ると、その男を落ち着かせようとしました。
「落ち着いてください。ここはアンティリアで、あなたは安全です」ヌサは言いました。
「そりゃすごい。お前らお馬鹿さんたちは何も知らないんだな! 出口はどこだ?!」と男はイライラしながら言いました。
みんな混乱しているようでした。どうして彼はそんなことを言うのでしょう?
「えー、おじさん、ここに出口はありませんよ! ここは天国ですよ! なぜ帰りたいのですか?」とガヤトリが尋ねました。
「馬鹿者め!」と男は叫びました。彼は切り株にとびのり、声を張り上げて言いました。
「みんな、よく聞け! チャはらは、ルールを破った者をここに送ってしまうより、殺してしまった方がよいとは決定した。道徳警察がここに来て、僕たちみんなを殺すんだ! 時間がない、早く隠れよう!」
男の言ったことに、人々はおどろき、慌てました。全員、なんとかして逃げ出すことを考えて騒がしくなりました。チャハラはバスワラを悲しい場所にしてしまいました。そのため、アンティリアに送られた人々はバスワラにいた時よりも幸せでした。もしアンティリアがなくなってしまったら、幸せでいられる場所も無くなってしまいます。戦うしかないことをヌサは知っていました。木の切り株にとびのると叫びました。
「みんな、静かにしてくれ!」
人々が静かになりました。みんながヌサを見ています。ヌサは緊張しましたが、言わなければならないことはわかっていました。
「いつまでも隠れ続けることはできない」とヌサは続けました。みんな静かに立っています。「僕たちは今、ジャングルの中にいる。隠れることはできる。木の下や穴の中にね。でも、いつかは彼らも僕たちを見つけるだろう。さあ、戦いの時だ! チャハラは僕たちの自由を奪い、そして、命も奪おうとしている! チャハラが僕たちに自由をくれないのなら、戦うしかない! たとえそれが僕たちの最後の行動になるとしても!」
ヌサは熱心に聞く人々を見ました。
「僕と一緒に戦うのは誰だ?」
Chapter 7
霧が出た日、広場は静かでした。道徳警察と一緒にチャハラと、そして数人のおびえた市民だけが広場を歩いていました。突然、小さな女の子がチャハラにぶつかりました。女の子は前を見ていなかったので、彼にぶつかったのです。
チャハラは転んだ少女を見下ろしました。キラナはひどいことが起こるのを覚悟して息を飲み込みました。
「この無礼者め! 広場にこいつを吊るせ! みんなの前で殺すのだ。みんなを集めろ!」とチャハラが命令しました。道徳警察につかまったキラナは泣き出しました。
しばらくして、人々が広場に集まりました。幼い子どもが殺されるのを見るためです。チャハラは許しませんでした。ロープが彼女の首にかけられます。キラナは泣きながら、死ぬのを待っていました。
「お前たちをここに集めたのは、ルールを破った時に何が起こるかを見てもらうためだ。」処刑の前に、チャハラは演説を始めました。「なぜルールを守らなければならないのか、それを思い出させてやる。」チャハラはキラナを最後にもう一度見ました。「ロープを引け。」
「やめろー!!」ガヤトリでした。彼女とカンタン、ヌサに連れられたアンティリアの部隊が戦う準備を整えて広場を囲んでいました。
昨夜、アンティリアの人々はバスワラに入っていました。見事に置いている場所を発見し、それらを全て奪ってきたのです。
道徳警察は準備も人も足りていませんでした。銃声が広場に響き、市民は逃げていきました。
アンティリアが勝っていました。混乱の中で、ヌサはガヤトリを探しました。ガヤトリはキラナの吊るされた体の前で泣いていました。キラナは死んでいました。
「はっはっは、遅かったな!」とチャハラは残酷に笑いました。
ガヤトリはチャハラに憎しみの目を向けました。「この悪魔!」と叫ぶと、ガヤトリはチャハラを地面に倒そうとぶつかりました。
「愚か者め! 私に勝てると思っているのか? バスワラは私のものだ! お前が勝つことはない!」そう言うと、チャハラはガヤトリを捕まえ、銃を頭にあてました。「もうすぐ援軍がやってくる。そうすればお前たちは全員、死ぬ!」
「そうはさせない! 武器も弾薬も僕たちが全て奪ったの! 父さん、あなたは勝てない。諦めろ!」とヌサは言いました。ヌサは銃を抜くとチャハラに向けました。
ガヤトリは目を見開きました。チャハラとヌサは家族だったのです!
「はっはっは! 私が諦めることはない! お前は私に勝てない!」とチャハラは怒りに叫びました。
ヌサはためらいました。「こんなことはしたくない。父さん。僕たちの勝ちなんだ! あなたの部隊が負けているのが見えないのですか? あなたが諦めれば、平和に終わらせることができるのに!」とヌサも大声を出しました。
「私はお前の父親ではないし、お前は私の息子でもない! 諦めたりするものか!」とチャハラは言いました。彼はガヤトリの頭を銃で強く押し、今にも撃とうとしました。
「やめろー!」とヌサは叫びました。二つの銃が同時に撃たれ、チャハラとガヤトリは地面に倒れてしまいました。
エピローグ
読者へ
バスワラの戦いから六ヶ月が過ぎた。チャハラは死んだ。でも心配しないで、ガヤトリは生きている。カンタンと共に、彼女はこの国の新しいリーダーになった。
バスワラの戦いから六ヶ月が過ぎた。チャハラは死んだ。でも心配しないで、ガヤトリは生きている。カンタンと共に、彼女はこの国の新しいリーダーになった。
僕は本を書き続けたかった。好きなことをして生きたいんだ。あの仕事はガヤトリとカンタンにぴったりだ。この手紙を読んでいるなら、僕は今、美しく晴れた日に窓の近くに座って、この手紙を書いている。窓からは、木や、庭で遊ぶ子どもたちが見える。紙ももう足りなくなってきたし、もうすぐ子どもたちが戻ってくる。君がどこにいたとしても、また会おう 。
さようなら。
ヌサ・ライハン・カタジャサ
THE END